皮を切らせて骨を絶つ ~急がれる国営企業民営化~
国営企業の株式化は、
ベトナム経済の市場経済化のため、
WTO公約の重要施策である。
しかしながら、抵抗勢力の存在等、
なかなか進まぬ側面もある。
年240社、計3,786社が株式化を終えた。
しかし、年々減少傾向(2007年150社、2008年6月まで34社)で、
1,700社が未だ株式化されていない。
(出所:「起業フォ-ラム」新聞)
2010年7月1日までに、全国営企業の株式化という目標は
未逹となる可能性が高い。
阻害要因
1)法整備の遅れ
株式化促進のスキーム(枠組み)は、2006年末に公布、
指導文書も2007年末まで発行されたが、
十分に機能しているとは言いがたい。
2)証券市場の影響
資金調達市場である株式市場は
2007年3月を頂点に下落傾向が止まらない。
このような市況下では、有利な条件での資金調達が出来ず、
関係者らは株式化に消極的だ。
3)煩雑な手続き
株式化の際に、保有資産の再確認(デューデリジェンス)が不可欠。
資産も莫大な大規模企業では、
これらの業務完遂には、膨大な時間と人員がかかる。
4)抵抗勢力の存在
国営企業の株式化=社会主義体制の崩壊といった
単純かつ、やや誤ったイメージを持つ人。
国営企業という「ぬるま湯」の中で、
勤続年数の長さだけで高い地位に就いた人。
国営ならではの利権に群がる関係団体など。
これらのような、政策の趣旨を理解せず、
自己の保身と利益のみを考える人々が、
株式化を妨げている。
“皮を切らせて骨を絶つ”
国営企業の株式化は、一時的に見れば、
自国利益の海外流出とも受け取られる。
しかし、経済や社会の発展には、
資本はもちろん、技術やビジネスチャンスなど、
外国からの投資や支援が不可欠だ。
今の痛みは、必ず大きなメリットとして、ベトナムに還元される。
目先の利益にとらわれず、長期的視野が必要である。
外国投資を呼び込むために
外国企業や投資家を呼び込むには、
フェアな経済体制と透明性の確保が重要である。
国営企業の株式化は、その大きな柱である。
役割と責任をより明確に
株式化促進策の一つとして、
国有株式の管理を目的とした、
国家資本管理会社が設立された。
しかしながら、同社への責務移譲は遅々として進んでいない。
今後、政府にはより強く具体的な施策が求められる。
監督=関係官庁
経営=企業経営陣
といった、役割・権限・責任を明確にし、
公共利益と経済利益を追求する体制への
変革を目指す市場経済にとって、当たり前のことが、
今、ベトナムに求められている。
“当たり前のこと“これが一番難しいのであるが(笑)
(タン)