« ベトナムクイズ! | メイン | 2009年1月1日より適用される規定 »

2009年01月05日

両刃の剣 ~ベトナム・日本経済連携協定~


2008年12月25日、ベトナム・日本両政府は
ベトナム・日本経済連携協定(EPA)に署名、
2009年から有効となる。

EPAとは、
ビジネス、サービス、投資など、
経済活動全般における経済活動の
環境改善、労働力移転、技術協力などを
包括的に網羅した協定。

EPA締結により、ベトナム・日本両国の経済関係は強化され、
国際的経済において、優位性が発揮されるだろう。

ベトナム政府の発表によると、
協定発効後10年は、両国間貿易の関税をほぼ撤廃する。
 日本→ベトナムへの輸入: 約95%非課税
 ベトナム→日本への輸入: 約88%非課税
(出典:日本ロイター)


手放しでは喜べない

2007年度の両国間輸出入額は120億ドルだったが、
2008年には150億ドルを超えると予想される。

EPA締結により、
今後、輸出入額は増加する見通しだが、
ベトナムにとって単純に喜ばしいといえるかは甚だ疑問である。

1)従来より低い税率
 ベトナムの対日主要輸出品である水産物の税率は、
 現在3.5~10%である。
 これを撤廃したからといって、
 輸出量が爆発的に増えるとは考えにくい。

2)技術・安全基準の高さ
 日本は、輸入品に求める
 技術基準や安全規格などの水準が高い。
 ベトナムの水産物は、
 幾度となくこの点について指摘されている。
 この問題を解決しない限り、
 輸出自体が拒否されることになる。

3)低い付加価値
 ベトナムの主要工業製品は、衣類加工品であるが、
 製品のほとんどは、自国ブランドではなく、
 OEM(相手先ブランド製造)品として輸出されている。
 そのため、商品的付加価値が低く、
 利益率も悪い。

4)対中国 低価格競争
 農産物の輸出に関して、アジア圏には
 安価な農産物を大量に輸出する中国があり、
 価格競争においては不利である。


国内経済圧迫の可能性も

輸入面でも問題を抱えている。
関税撤廃により、
市民の憧れである日本製品の価格は下がることだろう。

輸入量が増えれば、対日貿易収支の赤字は増加する。
「貿易赤字=悪」とはいえないが、
インフレ状態にあるベトナム経済にとっては
さらなるプレッシャーとなり、経済発展の阻害要因となるだろう。


攻撃は最大の防御

EPAにより、対日輸出の拡大を望むベトナム。
そのためには、なにが必要なのか?

1)変化に冷静な対応を
 ルールが変わると最初は混乱する。
 ビジネスでも同じことだ。
 EPAは、ベトナムにとって、一方的に不利なルールではない。
 状況を冷静に分析し、どのように動くべきか見極める必要がある。

2)世界に通用する技術と品質
 「安かろう、悪かろう」の時代はもう終わった。
 日本市場のみならず、
 すべての消費者は、製品に品質と安全を求めている。
 日本から入ってくるのは、輸入品だけではない。
 人材やその教育システム、技術や投資資金も
 日本から得られる良質な”品”のひとつだ。
 これらを吸収、活用しながら、
 ベトナムの付加価値を高めていくことが求められる。

中長期的な視野で、いかに立ち振る舞うか?
切れ味のいい「両刃の剣(EPA)」を使いこなすには、
“技と力”を養う必要がある。


タン


« ベトナムクイズ! | メイン | 2009年1月1日より適用される規定 »

    ・本資料に記載された情報の正確性・安全性を保証するものではなく、
     万が一、本資料に記載された情報に基づいて
     皆さまに何らかの不利益をもたらすようなことがあっても 、一切の責任を負いません。
    ・本資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり、
     投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。
    ・本資料の全部または一部を無断で複写・複製することを禁じます。

運営会社編集方針お問い合わせプライバシーポリシー