両刃の剣 ~ベトナム・日本経済連携協定~
2008年12月25日、ベトナム・日本両政府は
ベトナム・日本経済連携協定(EPA)に署名、
2009年から有効となる。
ビジネス、サービス、投資など、
経済活動全般における経済活動の
環境改善、労働力移転、技術協力などを
包括的に網羅した協定。
EPA締結により、ベトナム・日本両国の経済関係は強化され、
国際的経済において、優位性が発揮されるだろう。
ベトナム政府の発表によると、
協定発効後10年は、両国間貿易の関税をほぼ撤廃する。
日本→ベトナムへの輸入: 約95%非課税
ベトナム→日本への輸入: 約88%非課税
(出典:日本ロイター)
手放しでは喜べない
2008年には150億ドルを超えると予想される。
EPA締結により、
今後、輸出入額は増加する見通しだが、
ベトナムにとって単純に喜ばしいといえるかは甚だ疑問である。
1)従来より低い税率
ベトナムの対日主要輸出品である水産物の税率は、
現在3.5~10%である。
これを撤廃したからといって、
輸出量が爆発的に増えるとは考えにくい。
2)技術・安全基準の高さ
日本は、輸入品に求める
技術基準や安全規格などの水準が高い。
ベトナムの水産物は、
幾度となくこの点について指摘されている。
この問題を解決しない限り、
輸出自体が拒否されることになる。
3)低い付加価値
ベトナムの主要工業製品は、衣類加工品であるが、
製品のほとんどは、自国ブランドではなく、
OEM(相手先ブランド製造)品として輸出されている。
そのため、商品的付加価値が低く、
利益率も悪い。
4)対中国 低価格競争
農産物の輸出に関して、アジア圏には
安価な農産物を大量に輸出する中国があり、
価格競争においては不利である。
国内経済圧迫の可能性も
関税撤廃により、
市民の憧れである日本製品の価格は下がることだろう。
輸入量が増えれば、対日貿易収支の赤字は増加する。
「貿易赤字=悪」とはいえないが、
インフレ状態にあるベトナム経済にとっては
さらなるプレッシャーとなり、経済発展の阻害要因となるだろう。
攻撃は最大の防御
そのためには、なにが必要なのか?
1)変化に冷静な対応を
ルールが変わると最初は混乱する。
ビジネスでも同じことだ。
EPAは、ベトナムにとって、一方的に不利なルールではない。
状況を冷静に分析し、どのように動くべきか見極める必要がある。
2)世界に通用する技術と品質
「安かろう、悪かろう」の時代はもう終わった。
日本市場のみならず、
すべての消費者は、製品に品質と安全を求めている。
日本から入ってくるのは、輸入品だけではない。
人材やその教育システム、技術や投資資金も
日本から得られる良質な”品”のひとつだ。
これらを吸収、活用しながら、
ベトナムの付加価値を高めていくことが求められる。
中長期的な視野で、いかに立ち振る舞うか?
切れ味のいい「両刃の剣(EPA)」を使いこなすには、
“技と力”を養う必要がある。
タン