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2009年03月31日

契約実務 ~傾向と対策を練って、効率良いオフィス賃貸を!~


新興国ビジネスでは、思いもよらない事に足を引っ張られる。
今日は、ローカルオフィス賃貸時の問題点を、実例を挙げて記したい。


オフィストラブルを以下、4点にまとめてみた。
 1、契約書の問題
 2、ビジネス文化に関する問題
 3、建物に関する問題
 4、環境に関する問題
建物や、環境に関する問題は、雨漏りがする。隣のオフィスがうるさい。
臭う等、想像がつきやすい。
しかしながら、契約書に関する問題、オーナーや文化に関する問題となると、
理解しがたいものが多く、事前にある程度の学習と覚悟が必要となる。

オフィス賃貸トラブル~事例~

場所:Hanoi Ba Dinh区
立地:大通りに面した角地
     半地下 大家住居
     半1F   銀行
     その他のフロアー 外資系法律事務所 日系ODA関連事務所(無人)
建物:70M2 7階建て 築10年未満?
大家:ローカルベトナム人
賃料:14USD/M2(ただし、階段、ベランダ等までカウント 実質18USD/M2程度)


~トラブル事例~

ケース1:無断立ち入り(契約書・ビジネス文化に関する問題)

状況
ベランダつきのオフィスを賃貸。祭壇付。大して気にも留めず、賃貸。
 毎週、祭壇に生花と線香が。
大家曰く、「家族のためのお祈りは欠かせない」とのことで
 オフィス内に無断進入、通過し、ベランダの祭壇でお祈りをしていることが判明。

大家の主張
「家族に何かあったらどうする」
 「セキュリティー上、どのオフィスの鍵も大家に渡すことになっている」
といって譲らず。
雨漏りした際、誰が解決するのか?といった事も問題にあげる。
(オフィスに、雨漏り跡があったので、契約書に、雨漏りにて損害を受けた際、
損害賠償請求できる条項を入れたが、却下された経緯有)

妥協点
 コンプライアンスとセキュリティーの問題で無断立ち入りをせず、
 せめて営業時間中に来ていただくことをお願いする。
 納得しないが、鍵を変えて進入阻止。

解決時間
 日本人管理職 1名    4時間
ベトナム人管理職 1名  5時間
 

ケース2:支払い(契約書・ビジネス文化に関する問題)

状況
ベトナムでは、家賃の定期的な一括支払いが主流(3ヶ月、6ヶ月)。
 大家が営業時間中に来社(怒鳴り込み)
翌3ヶ月分の家賃が未払いであるとクレーム。

対応①
 1、請求書を発行するよう依頼する。
 2、必要事項を記入し用意するよう、逆に請求される。
 3、契約書に記載してある口座への振り込み。オーナー入金確認。
 4、即日現金ドル払いを要求。
    理由⇒VNDより、USDが欲しい
 5、為替手数料以上の額を上乗せし、VND払い
  理由⇒銀行と市中レートに相違があるとの事
 6、個人口座へ振り込み直すように、怒鳴り込み
  理由⇒会社口座では、多く税金を取られる
 7、VNDにて、再度振込み直す
 8、後日、為替手数料不足分の16,000ドン(約900円)をさらに請求。
    理由⇒オーナー確認日と振込み日のレートが違ったとの事
 9、その後、放置
    理由⇒これ以上、対応する必要なし

解決時間
 日本人所長  1名   2時間
 日本人管理職 1名   5時間
 ベトナム人管理職 1名 5時間
 ベトナム人スタッフ1名 5時間

コスト
 約60万ドン(3,500JPY) 為替手数料不足分として

教訓
 いつでも出てゆく覚悟と、準備が必要。

ケース3:水光熱費(ビジネス文化に関する問題)

状況 
毎月、大家自らが作成したエクセルシートで電気水道料金が請求書されていた。
電気料金体系は、(家庭用・オフィス用)、段階料金(基礎料金、第1料金、第2料金…)
であるが、最高位料金以上の単価請求が発覚。

大家の主張
 賃貸契約締結時に総務担当社員(退社済)と、口頭約束した方法で算出。
 一般料金に上乗せした水光熱費は、大家の商売との事。

妥協点
 問題山積の最中、金額が小さかったので、問題を問わぬ事に。

教訓
 契約書に支払いの全ての記載は不可欠。また、口約束無効の条項も必要。


契約書に明記すべき事項

1、支払い
 ・家賃・・・USD払い主流であるが、USD振込みは出来ない。
 ・レート…いつの、どこのレート(ベトコンバンクが一般的)で対応するのか。
 ・管理費・・・金額、算出方法、供給会社の設定料金が変更した場合の対応
 ・支払い方法・・・銀行振込みか現金、どの料金を何の方法で支払うか
 ・通貨・・・USD/VND、ベースとなる為替
 ・請求書/領収書の発行・・・発行期限(何日前/何日以内)
 ・銀行口座・・・振込み先口座の明記

2、設備(改装、セキュリティー)
 ・内装・・・契約締結前に大家に希望伝え、整備してもらうべき
 ・設備・・・壁やドアの取りはずしの可否
 ・看板・・・設置場所の確認、設置費用
 ・鍵の管理・・・入居時に自社で変更。合鍵譲渡せず、自己都合での取替え可能とすべき
 ・無断入室・・・罰則条項を設定した禁止とすべき
 ・災害、故障等の責任・・・営業時間外、当方過失でない場合は、一切の責任を負わない。
           損失は大家負担とすべき(現実問題、応じないが提示が重要)                                      

3、その他注意点
 ・言語・・・ベトナム語版に、日本語/英語訳を添付し、同等の権限を持たせるべき
 ・口頭約束・・・一切無効とすべき条項を。
 ・契約期間・・・契約更新、解除の条件について
 ・ペナルティ・・・支払い遅延時に法外な金利を請求される可能性もあるので要注意。
 ・事前交渉・・・賃料、設備、サービス等、融通が効くので、強気に交渉するべき


まとめ

①傾向を見極め、対策を。
 ・未成熟なビジネス文化に関する情報を収集し、早急に対策を練ることが重要。
 ・契約書は、あらゆる自体を想定した、新興国用(中国ビジネス契約書事例集から
  引用とか…)をベースに作成。供えあっても憂いはありますが(笑)

②話し合いは無意味。
 論理的に交渉を進めると、論点のすり替えや、
 詭弁で対応してくるため、話し合いにならない。
 また、オーナーの力が強すぎるので、また、後日、話を覆す事が多々あるので、
 話し合いによる交渉は期待せず、トラブルが起こった際は、
 即座に次のオフィスを探すべきである。

③一を聞いて十を感じよう。
 契約時のオーナーの対応に、少しでも違和感があるならば、入居を取りやめましょう。
 きっとその違和感はあたっています。
 必ず交渉は複数名で臨み、他者の意見も参考にオーナーを測りましょう

④安物買いの銭失いにならぬよう。
 最後は日本人マネージャーが対応せざるを得ない。
 このような環境では、解決に費やす時間と労力は馬鹿にならないことを理解し、
 少々予算オーバーでも、入居済他社の評判の良いオフィスを選びましょう。

⑤敵は内にあり
 このような面倒な交渉に、ベトナム人総務部マネージャーは対応するが、
 いやな事からは逃げ出すベトナム人である。適当に口約束で、まとめてきたり、
 その場しのぎで乗り切ることが多い事もあらかじめ、知っておきましょう。


綿密な契約書の準備は言うまでもないが、
いつでもオフィス移転ができる身軽さと覚悟を備えておきたい。



(福田)

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