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2009年05月25日

社会主義下の労働法 ~ベトナム労働法を読み解く~


「労働法で決まっています。」

従業員トラブルで頻繁に登場する決まり文句。
長くベトナム人労働者と接していると、慣れもしてくるが、
日本で従業員にこんな事を言われると、相当怯んでしまう。

社会主義国ベトナム。法令の随所に“社会主義”が織り込まれているので、
その、労働法の触りと実際について紹介します。


越日労働法対比


ベトナム労働法日本の労働法
法規ベトナム社会主義国労働法典労働基準法
施行1995/01/011947年4月7日(公布)
目次 序章第1章 総則
 第1章 総則 第2章 労働契約
 第2章 雇用 第3章 賃金
 第3章 職業訓練 第4章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇
 第4章 労働契約 第5章 安全及び衛生
 第5章 労働協約 第6章 年少者・妊産婦等
 第6章 賃金 第7章 技能者の養成
 第7章 労働時間・休憩 第8章 災害補償
 第8章 労働規律、損害責任 第9章 就業規則
 第9章 労働安全衛生 第10章 寄宿舎
 第10章 女子労働に対する特別規定 第11章 監督機関
 第11章 未成年者、その他労働者に対する特別規定 第12章 雑則
 第13章 罰則
 第12章 社会保険 (参照:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO049.html
 第13章 労働組合
 第14章 労働争議の解決
 第15章 労働への国家統制
 第16章 労働と労働違反に関する国家監査

(参照:http://www.global-standards.com/Resources/VNLaborCode1994-2002.pdf



浮かび上がる相違点~根本的考え方

1、歴史

ベトナム14年、日本62年
ベトナム労働法の歴史は浅い。

外資系企業への就職理由のひとつが「労働法に従っている」こと。
国営企業を別として、ベトナム民間企業への浸透不は十分。
高等教育を受け、”正しい働き方”を知っているベトナム人程、
労働法遵守は懸念事項、何かと保身の術となる。

2、労働者保護

ベトナム労働法第12章~労働者の権利を守る条項が続く。
労働者教育の捉え方も然り。
 ベトナム労働法第3章実習訓練: 労働者の教育提供、訓練施設に関する規定
 日本労働法第7章技能者の養成: 技能習得名目下での労働者酷使禁止

「午前中は数学の基礎講座をしていました」というベトナム人会社経営者、
「会社が教育をしてくれなかった」と退職を決めたベトナム人労働者。
日本の自己育成概念とは異なる、学校教育の延長的労働文化が存在。

3、労使関係

ベトナム:「労働法典は、労働者の労働、利益、その他の権利を守ると同時に、
      雇用者の法的権利、利益を守る。」
日本:「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。」
共に労使対等を謡っているように見えるが、ベトナム労働法では雇用者の権利保全が
労働者の権利保全に追随している形である。

正しく読んで正しく理解を

「労働法で決まっています。」
対応箇所を調べてみると、「労使双方合意の上…」「…することができる」という
限りで、必ずしも「しなければならない」ではないことが多い。
労働者も彼らの”一般常識”でいっているので、
法律を照らし合わせ、双方で正しく理解することが円満な人事につながる。

労働慣習と正しい労働法、
しかしながら、労働者が最終的に選択するのは常に自分に有利な方。
法律に従うこと=正しいやり方(成功)ではないのは
越日問わず、同じことかもしれない。

金持ち喧嘩せず?

雇われる側、解雇される側にとって、
法律は有利な条件を引き出す、口実にしか過ぎない。
製造業等、多くの従業員を抱える企業であれば、
1人に“ごね得“をさせてしまう事が、
大幅な経費UPにつながるので、注意は必要であろう。
販売系等、中規模オフィスを構える企業であれば、
実際問題腹立たしい事ばかりではあるが、
法令+αの割り増し賃金を支払う事で、
管理職が本来取り組むべき業務を遂行し、
利益を上げてゆくことが、利益の最大化につながる。
“金持ち喧嘩せず”の心境か??

様々な困難や問題を抱えるベトナムではあるが、国内市場ひとつ見ても、
若年層の爆発的増大=大きな内需の発生=成長 である。
様々な分野が未発達なベトナムへの進出。
それをリスクと捕らえるのか、大きな成功にするのか。
法令の運用は成功要素の1つであり、留意されたし。

注意:
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本文に基づく判断に関しては責任を負いかねます。
また、万が一本資料に記載された情報に基づいて皆さまに何らかの不利益を
もたらすようなことがあっても、一切の責任を負いません。


(福田)

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