証券「ブーム」と失ったもの
国営企業の民営化は、ベトナムの経済及び労働者の生活に大きな変革をもたらしている。
ただ、企業の成長チャンスは明確に出現しているが、
労働者に同様のチャンスがあるかどうかは大きな疑問である。
Vneconomy.net 2009年3月23日
ただ、企業の成長チャンスは明確に出現しているが、
労働者に同様のチャンスがあるかどうかは大きな疑問である。
市場の「ブーム」がもたらした問題
ベトナム証券市場は、2006年から2007年にかけて市場開設以来最も安定し、かつ急速に発展した。
外国投資家はベトナム市場を、発展潜在力の大きい市場と評価した。
国営企業の民営化は、外国投資家に特に注目された。
国営企業は通常大きな資産を所有するが、
それら資産が発展途上国では低く評価されているからである。
また、ベトナムのように若年人口の多い市場に対しては、国営企業への投資が最も容易である。
外国の投資資金、さらには国内の金や不動産市場に長い間「眠っていた」資金が動き出し、
証券市場が急拡大した。
ベトナムでは、APEC開催の2006年からVN-Indexが上昇し始め、
1年後には260%以上の成長を記録した。
Citigroup, HSBC, Morgan Stanley, Merrill Lynch等の世界的な金融機関は
こぞってベトナムに駐在事務所を開設した。
証券市場の拡大とともに、証券への投資「ブーム」が生じた。
上場市場だけではなく、IPO市場も飛躍的に拡大した。
例えば、2006年12月30日に行われた石油保険会社(PVI)のIPOは
購入申請数が売却数の26倍となった。
数千人の投資家が、入札票獲得のためハノイ証券取引センターの前に並んだ。
こうした「ブーム」の中、労働者、特に民営化対象企業の労働者は
突然、資産家として注目を浴びることになった。
民営化に際して、当該企業の労働者は企業の価値を創造する人物として評価され、
株式を優先的に有利発行されるが、そうした株式を投資家が競って購入しようとした。
IPOの過熱
ただ、こうした労働者への有利発行に関する施策は、市場の動向に応じて度々変更された。
国営企業の民営化に関する基礎的ルールは頻繁に修正され、
2002年にはNo.64/2002/NĐ-CP、2004年にはNo.187/2004/NĐ-CP、
そして2008年には現在適用されているNo.109/2008/NĐ-CPが設定された。
労働者の注目を最も集めたのは、IPO発行に関する権利及び優遇政策――
主に購入数と価格について――である。
議定No.64では、労働者が勤続年数1年ごとに最大10株まで額面70%で購入可能、
保有義務は3年以上であったが、
議定No.187では勤続年数1年ごとに最大100株まで落札平均株価の60%で購入可能とし、
3年の保有義務は撤廃された。
議定No.109では議定No.187の規定が継続されている。
株価変動は投資家の欲望と恐怖心
労働者に対する上記規定は、
企業の利益の配分や、企業に対する労働者の貢献度に基づいて策定されているのだろうか。
購入数について
勤続年数1年ごとに最大100株購入できるという規定は一見平等だが、
実際は、企業に対する貢献度に関わらず、皆が同じとなり、
社長が他の労働者と同様に評価されることになる。
有利発行価格について
落札平均株価の60%という購入価格は、労働者に対して一見有利な制度に見えるが、
実際には労働者は市場の変動を自覚しなくてはならない。
証券市場は欲望と恐怖心に基づいて運営される、という言葉どおり、
株価が額面の数十倍に上昇した時に喜んで購入した者が、
株価が額面近くまで下落しても恐くて購入しない、という事態に陥っている。
市場価格に連動する有利発行というシステムは、
結果として労働者を間接な投資家に変えたのである。
2006年、2007年のPVIのIPOに参加した人は、このシステムのリスクが良くわかるだろう。
2006年12月の1回目のIPOではPVIの落札平均株価は160,000ドンであったが、
2回目には75,000ドンに落ち、現在の株価は25,000ドンである。
市場は、いつも客観的で正しいものである。
Vietcombank株を有利発行価格の60,000ドンで購入した投資家でさえ、
リスクにさらされていたのである。
ここ数カ月の未上場市場でのVietcombank株価は30,000ドン~32,000ドン前後で、
60,000ドンで購入した人でさえ50%を失った。
Vietcombankに関する面白い話がある。
Vietcombankの民営化計画に従って転勤させられ、Vietcombank株を購入できなかった人が、
以前は涙にくれていたが、今では「早期に転勤してよかった」と嬉しくしかたがない、という話である。
ベトナム証券市場は、2006年から2007年にかけて市場開設以来最も安定し、かつ急速に発展した。
外国投資家はベトナム市場を、発展潜在力の大きい市場と評価した。
国営企業の民営化は、外国投資家に特に注目された。
国営企業は通常大きな資産を所有するが、
それら資産が発展途上国では低く評価されているからである。
また、ベトナムのように若年人口の多い市場に対しては、国営企業への投資が最も容易である。
外国の投資資金、さらには国内の金や不動産市場に長い間「眠っていた」資金が動き出し、
証券市場が急拡大した。
ベトナムでは、APEC開催の2006年からVN-Indexが上昇し始め、
1年後には260%以上の成長を記録した。
Citigroup, HSBC, Morgan Stanley, Merrill Lynch等の世界的な金融機関は
こぞってベトナムに駐在事務所を開設した。
証券市場の拡大とともに、証券への投資「ブーム」が生じた。
上場市場だけではなく、IPO市場も飛躍的に拡大した。
例えば、2006年12月30日に行われた石油保険会社(PVI)のIPOは
購入申請数が売却数の26倍となった。
数千人の投資家が、入札票獲得のためハノイ証券取引センターの前に並んだ。
こうした「ブーム」の中、労働者、特に民営化対象企業の労働者は
突然、資産家として注目を浴びることになった。
民営化に際して、当該企業の労働者は企業の価値を創造する人物として評価され、
株式を優先的に有利発行されるが、そうした株式を投資家が競って購入しようとした。
IPOの過熱
ただ、こうした労働者への有利発行に関する施策は、市場の動向に応じて度々変更された。
国営企業の民営化に関する基礎的ルールは頻繁に修正され、
2002年にはNo.64/2002/NĐ-CP、2004年にはNo.187/2004/NĐ-CP、
そして2008年には現在適用されているNo.109/2008/NĐ-CPが設定された。
労働者の注目を最も集めたのは、IPO発行に関する権利及び優遇政策――
主に購入数と価格について――である。
議定No.64では、労働者が勤続年数1年ごとに最大10株まで額面70%で購入可能、
保有義務は3年以上であったが、
議定No.187では勤続年数1年ごとに最大100株まで落札平均株価の60%で購入可能とし、
3年の保有義務は撤廃された。
議定No.109では議定No.187の規定が継続されている。
株価変動は投資家の欲望と恐怖心
労働者に対する上記規定は、
企業の利益の配分や、企業に対する労働者の貢献度に基づいて策定されているのだろうか。
購入数について
勤続年数1年ごとに最大100株購入できるという規定は一見平等だが、
実際は、企業に対する貢献度に関わらず、皆が同じとなり、
社長が他の労働者と同様に評価されることになる。
有利発行価格について
落札平均株価の60%という購入価格は、労働者に対して一見有利な制度に見えるが、
実際には労働者は市場の変動を自覚しなくてはならない。
証券市場は欲望と恐怖心に基づいて運営される、という言葉どおり、
株価が額面の数十倍に上昇した時に喜んで購入した者が、
株価が額面近くまで下落しても恐くて購入しない、という事態に陥っている。
市場価格に連動する有利発行というシステムは、
結果として労働者を間接な投資家に変えたのである。
2006年、2007年のPVIのIPOに参加した人は、このシステムのリスクが良くわかるだろう。
2006年12月の1回目のIPOではPVIの落札平均株価は160,000ドンであったが、
2回目には75,000ドンに落ち、現在の株価は25,000ドンである。
市場は、いつも客観的で正しいものである。
Vietcombank株を有利発行価格の60,000ドンで購入した投資家でさえ、
リスクにさらされていたのである。
ここ数カ月の未上場市場でのVietcombank株価は30,000ドン~32,000ドン前後で、
60,000ドンで購入した人でさえ50%を失った。
Vietcombankに関する面白い話がある。
Vietcombankの民営化計画に従って転勤させられ、Vietcombank株を購入できなかった人が、
以前は涙にくれていたが、今では「早期に転勤してよかった」と嬉しくしかたがない、という話である。
Vneconomy.net 2009年3月23日