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2009年11月02日

収益性から見た銀行の競争力


ここ近年、銀行のシェアに
重大な変化があった。
シェアの変化に現れる
国営銀行と民間銀行セクターの
競争力を変えた重要な要素が何か。



マーケットシェアの遍歴
表1:2000~08年の資金貸出マーケットシェア(単位:%)

200020012002200320042005200620072008
MBBank777980797773655552
民間銀行9910111215212932
国営銀行+ 銀行合弁会社12109910109910
他の機関222222576
(出典)国家銀行

表2:2000~08年期の資金調達マーケットシェア (単位:%)

200020012002200320042005200620072008
MBBank778079787575695960
民間銀行11910111316223029
国営銀行+ 銀行合弁会社101099108899
他の機関111122122
(出典)国家銀行

2002年から今日にかけて
銀行のシェアは大きく変化した。
2002年に国営銀行が資金調達および貸出の
リーダーとして活躍し、
2002年はそれぞれに85%、79%であったが、
2008年には各52%、60%と数字を下げている。

その反面、民間商業銀行が大きく成長、
資金貸出と調達のシェアを2002年の
それぞれ10%、9%から
2008年には、32%、29%と増加させている。

また、残りのシェアを外国銀行の支店が占め、
2002年から2008年にかけて
安定的に維持させている。
では、ここで考えたい問題として
民間と国営銀行との間で
競争を生み出したきっかけと
シェアを変えた主な要素が何か、
ということがある。

以下は2002年から2008年までの
銀行の会計報告に基づいた
収益性に関する分析である。

国営銀行について、研究対象としたのは
大手4行の農業農村開発銀行(Agribank)、
ベトナム商工銀行(Vietinbank)、
ベトナム投資開発銀行(BIDV)、
ベトナム商業銀行(Vietcombank)である。
このうち、Vietcombankは民営化されたが、
国有率が圧倒的であるため、
国営商業銀行グループに含める。

また、シェアに関するデータの出典は
国家銀行の年間報告書である。

一方、民間商業銀行について、
研究対象としたのは
大規模4行のACB、Sacombank、Eximbank、
Techcombankである。
こちらの民間商業銀行に関するデータも
国営銀行と同様に、すべて国家銀行の
年間報告書を参考にしたものである。

利益性に関する分析
表3:平均金利の差(単位:%)

2002200320042005200620072008
国営商業銀行
Agribank3.122.953.294.043.993.844
Vietinbank-2.493.163.622.692.753.79
BIDV2.052.012.152.812.442.642.7
VCB1.111.431.782.472.282.051.69
国営商業銀行の平均2.092.222.63.242.852.823.05
民間商業銀行株式会社
ACB2.622.722.522.542.31.863.86
STB2.612.713.43.753.671.882.61
EIB--2.032.312.831.821.89
TCB1.852.172.343.22.512.233.02
民間商業銀行の平均2.362.542.572.952.831.952.85
(出典)各銀行の年間報告

平均金利の差を用いた国営と銀行の収益性分析
この数値は、資金調達および貸出プロセスで
仲介機関として銀行の活動効果を
計るものであるとともに、
商業銀行の伝統的な営業分野での
競争力を評価するために使われる。

2002年と2003年を除いて、
2004年以降が、国営・民間銀行間の競争が
最も激しい時期である。
このうち、2007、08年の国営銀行の
調達・貸出金利はそれぞれ
2.82%、3.05%である。
また、民間商業銀行の大手4行の
調達金利と貸出金利はそれぞれ
1.95%、2.85%である。

また、国営銀行の不良債権問題について、
不良債権の割合および
資金貸出リスクの準備資金が
国営銀行の金融活動の効果を
低下させた重要な原因である。

2008年末、
ベトナム会計基準(VAS)に基づいて
計算された結果によると、
国営銀行では不良債権が
貸出全体の1~4%を占めるが、
民間商業銀行上位10行では
同割合が2%以下である。
これは、国営銀行の顧客割合の
その多くが「戦略顧客」である
国営企業であることと関係する。

各国営商業銀行は、国営企業にとって
主要な資金供給源である。
国家銀行の統計によると、
国営企業の社債が
国営銀行の貸出総額の
30~40%を占める。

この様な「姉妹」信用関係の中で、
中長期の貸出、元利の返還方式および
保証条件といった
ほかの潜在的リスクを抱えることとなる。

また、調達・貸出金利の差について、
国営銀行が民間銀行より高いが、
民間銀行のNIM(Net Interest Margin)は
国営銀行より民間銀行の方が高い。

国営銀行の資金調達活動は優位なのか
この点については
証明できる確かなデータがないが、
ある意味で正しいと考えられる。

まず、国営銀行は全国をカバーする
幅広いネットワークを有する。
特に、Agribankは2000ある支店網により
民間からの預金調達に対して
圧倒的な競争力を有する。

また、預金口座を通じて
国営企業から安価で大量の資金を調達できる。
国営企業は国営銀行の伝統的な顧客であるが、
民間銀行がこれらに接することは困難である。

また、国営銀行は
政府から一時的に巨大な資金源の提供を
受けることも可能である。
例えば、援助資金、各行事の支援資金等である。
これにより、2008年までは
国庫の裕福な資金源を利用できた。



サイゴンエコノミックスタイムズ 2009年11月2日

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