収益性から見た銀行の競争力
ここ近年、銀行のシェアに
重大な変化があった。
シェアの変化に現れる
国営銀行と民間銀行セクターの
競争力を変えた重要な要素が何か。
マーケットシェアの遍歴
2002年から今日にかけて
銀行のシェアは大きく変化した。
2002年に国営銀行が資金調達および貸出の
リーダーとして活躍し、
2002年はそれぞれに85%、79%であったが、
2008年には各52%、60%と数字を下げている。
その反面、民間商業銀行が大きく成長、
資金貸出と調達のシェアを2002年の
それぞれ10%、9%から
2008年には、32%、29%と増加させている。
また、残りのシェアを外国銀行の支店が占め、
2002年から2008年にかけて
安定的に維持させている。
では、ここで考えたい問題として
民間と国営銀行との間で
競争を生み出したきっかけと
シェアを変えた主な要素が何か、
ということがある。
以下は2002年から2008年までの
銀行の会計報告に基づいた
収益性に関する分析である。
国営銀行について、研究対象としたのは
大手4行の農業農村開発銀行(Agribank)、
ベトナム商工銀行(Vietinbank)、
ベトナム投資開発銀行(BIDV)、
ベトナム商業銀行(Vietcombank)である。
このうち、Vietcombankは民営化されたが、
国有率が圧倒的であるため、
国営商業銀行グループに含める。
また、シェアに関するデータの出典は
国家銀行の年間報告書である。
一方、民間商業銀行について、
研究対象としたのは
大規模4行のACB、Sacombank、Eximbank、
Techcombankである。
こちらの民間商業銀行に関するデータも
国営銀行と同様に、すべて国家銀行の
年間報告書を参考にしたものである。
利益性に関する分析
平均金利の差を用いた国営と銀行の収益性分析
この数値は、資金調達および貸出プロセスで
仲介機関として銀行の活動効果を
計るものであるとともに、
商業銀行の伝統的な営業分野での
競争力を評価するために使われる。
2002年と2003年を除いて、
2004年以降が、国営・民間銀行間の競争が
最も激しい時期である。
このうち、2007、08年の国営銀行の
調達・貸出金利はそれぞれ
2.82%、3.05%である。
また、民間商業銀行の大手4行の
調達金利と貸出金利はそれぞれ
1.95%、2.85%である。
また、国営銀行の不良債権問題について、
不良債権の割合および
資金貸出リスクの準備資金が
国営銀行の金融活動の効果を
低下させた重要な原因である。
2008年末、
ベトナム会計基準(VAS)に基づいて
計算された結果によると、
国営銀行では不良債権が
貸出全体の1~4%を占めるが、
民間商業銀行上位10行では
同割合が2%以下である。
これは、国営銀行の顧客割合の
その多くが「戦略顧客」である
国営企業であることと関係する。
各国営商業銀行は、国営企業にとって
主要な資金供給源である。
国家銀行の統計によると、
国営企業の社債が
国営銀行の貸出総額の
30~40%を占める。
この様な「姉妹」信用関係の中で、
中長期の貸出、元利の返還方式および
保証条件といった
ほかの潜在的リスクを抱えることとなる。
また、調達・貸出金利の差について、
国営銀行が民間銀行より高いが、
民間銀行のNIM(Net Interest Margin)は
国営銀行より民間銀行の方が高い。
国営銀行の資金調達活動は優位なのか
この点については
証明できる確かなデータがないが、
ある意味で正しいと考えられる。
まず、国営銀行は全国をカバーする
幅広いネットワークを有する。
特に、Agribankは2000ある支店網により
民間からの預金調達に対して
圧倒的な競争力を有する。
また、預金口座を通じて
国営企業から安価で大量の資金を調達できる。
国営企業は国営銀行の伝統的な顧客であるが、
民間銀行がこれらに接することは困難である。
また、国営銀行は
政府から一時的に巨大な資金源の提供を
受けることも可能である。
例えば、援助資金、各行事の支援資金等である。
これにより、2008年までは
国庫の裕福な資金源を利用できた。
サイゴンエコノミックスタイムズ 2009年11月2日
重大な変化があった。
シェアの変化に現れる
国営銀行と民間銀行セクターの
競争力を変えた重要な要素が何か。
マーケットシェアの遍歴
表1:2000~08年の資金貸出マーケットシェア(単位:%) | |||||||||
2000 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | |
MBBank | 77 | 79 | 80 | 79 | 77 | 73 | 65 | 55 | 52 |
民間銀行 | 9 | 9 | 10 | 11 | 12 | 15 | 21 | 29 | 32 |
国営銀行+ 銀行合弁会社 | 12 | 10 | 9 | 9 | 10 | 10 | 9 | 9 | 10 |
他の機関 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 5 | 7 | 6 |
(出典)国家銀行 |
表2:2000~08年期の資金調達マーケットシェア (単位:%) | |||||||||
2000 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | |
MBBank | 77 | 80 | 79 | 78 | 75 | 75 | 69 | 59 | 60 |
民間銀行 | 11 | 9 | 10 | 11 | 13 | 16 | 22 | 30 | 29 |
国営銀行+ 銀行合弁会社 | 10 | 10 | 9 | 9 | 10 | 8 | 8 | 9 | 9 |
他の機関 | 1 | 1 | 1 | 1 | 2 | 2 | 1 | 2 | 2 |
(出典)国家銀行 |
2002年から今日にかけて
銀行のシェアは大きく変化した。
2002年に国営銀行が資金調達および貸出の
リーダーとして活躍し、
2002年はそれぞれに85%、79%であったが、
2008年には各52%、60%と数字を下げている。
その反面、民間商業銀行が大きく成長、
資金貸出と調達のシェアを2002年の
それぞれ10%、9%から
2008年には、32%、29%と増加させている。
また、残りのシェアを外国銀行の支店が占め、
2002年から2008年にかけて
安定的に維持させている。
では、ここで考えたい問題として
民間と国営銀行との間で
競争を生み出したきっかけと
シェアを変えた主な要素が何か、
ということがある。
以下は2002年から2008年までの
銀行の会計報告に基づいた
収益性に関する分析である。
国営銀行について、研究対象としたのは
大手4行の農業農村開発銀行(Agribank)、
ベトナム商工銀行(Vietinbank)、
ベトナム投資開発銀行(BIDV)、
ベトナム商業銀行(Vietcombank)である。
このうち、Vietcombankは民営化されたが、
国有率が圧倒的であるため、
国営商業銀行グループに含める。
また、シェアに関するデータの出典は
国家銀行の年間報告書である。
一方、民間商業銀行について、
研究対象としたのは
大規模4行のACB、Sacombank、Eximbank、
Techcombankである。
こちらの民間商業銀行に関するデータも
国営銀行と同様に、すべて国家銀行の
年間報告書を参考にしたものである。
利益性に関する分析
表3:平均金利の差(単位:%) | |||||||
2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | |
国営商業銀行 | |||||||
Agribank | 3.12 | 2.95 | 3.29 | 4.04 | 3.99 | 3.84 | 4 |
Vietinbank | - | 2.49 | 3.16 | 3.62 | 2.69 | 2.75 | 3.79 |
BIDV | 2.05 | 2.01 | 2.15 | 2.81 | 2.44 | 2.64 | 2.7 |
VCB | 1.11 | 1.43 | 1.78 | 2.47 | 2.28 | 2.05 | 1.69 |
国営商業銀行の平均 | 2.09 | 2.22 | 2.6 | 3.24 | 2.85 | 2.82 | 3.05 |
民間商業銀行株式会社 | |||||||
ACB | 2.62 | 2.72 | 2.52 | 2.54 | 2.3 | 1.86 | 3.86 |
STB | 2.61 | 2.71 | 3.4 | 3.75 | 3.67 | 1.88 | 2.61 |
EIB | - | - | 2.03 | 2.31 | 2.83 | 1.82 | 1.89 |
TCB | 1.85 | 2.17 | 2.34 | 3.2 | 2.51 | 2.23 | 3.02 |
民間商業銀行の平均 | 2.36 | 2.54 | 2.57 | 2.95 | 2.83 | 1.95 | 2.85 |
(出典)各銀行の年間報告 |
平均金利の差を用いた国営と銀行の収益性分析
この数値は、資金調達および貸出プロセスで
仲介機関として銀行の活動効果を
計るものであるとともに、
商業銀行の伝統的な営業分野での
競争力を評価するために使われる。
2002年と2003年を除いて、
2004年以降が、国営・民間銀行間の競争が
最も激しい時期である。
このうち、2007、08年の国営銀行の
調達・貸出金利はそれぞれ
2.82%、3.05%である。
また、民間商業銀行の大手4行の
調達金利と貸出金利はそれぞれ
1.95%、2.85%である。
また、国営銀行の不良債権問題について、
不良債権の割合および
資金貸出リスクの準備資金が
国営銀行の金融活動の効果を
低下させた重要な原因である。
2008年末、
ベトナム会計基準(VAS)に基づいて
計算された結果によると、
国営銀行では不良債権が
貸出全体の1~4%を占めるが、
民間商業銀行上位10行では
同割合が2%以下である。
これは、国営銀行の顧客割合の
その多くが「戦略顧客」である
国営企業であることと関係する。
各国営商業銀行は、国営企業にとって
主要な資金供給源である。
国家銀行の統計によると、
国営企業の社債が
国営銀行の貸出総額の
30~40%を占める。
この様な「姉妹」信用関係の中で、
中長期の貸出、元利の返還方式および
保証条件といった
ほかの潜在的リスクを抱えることとなる。
また、調達・貸出金利の差について、
国営銀行が民間銀行より高いが、
民間銀行のNIM(Net Interest Margin)は
国営銀行より民間銀行の方が高い。
国営銀行の資金調達活動は優位なのか
この点については
証明できる確かなデータがないが、
ある意味で正しいと考えられる。
まず、国営銀行は全国をカバーする
幅広いネットワークを有する。
特に、Agribankは2000ある支店網により
民間からの預金調達に対して
圧倒的な競争力を有する。
また、預金口座を通じて
国営企業から安価で大量の資金を調達できる。
国営企業は国営銀行の伝統的な顧客であるが、
民間銀行がこれらに接することは困難である。
また、国営銀行は
政府から一時的に巨大な資金源の提供を
受けることも可能である。
例えば、援助資金、各行事の支援資金等である。
これにより、2008年までは
国庫の裕福な資金源を利用できた。
サイゴンエコノミックスタイムズ 2009年11月2日