タイミング難しい金融緩和政策
国家銀行は、金融緩和政策の一環として、
2008年10~12月3ヶ月連続で、
公定歩合、割引金利、資金供給金利を引き下げた。
決定No.3161/QĐ-NHNNにより、ベトナムドンの公定歩合を、
年間10%から8.5%に引き下げた。
それにより、各信用機関の顧客に対する貸出最高金利は、
年間15%から12.75%に減。
それと同時に、決定No. 3159/QĐ-NHNNにより、
銀行システム内の資金供給金利、割引金利、貸出金利を調整。
資金供給金利:年間11%→9.5%
割引金利:年間9%→7.5%
貸出金利:年間11%→9.5%
2008年の金利の変動状況を見ると、
国家銀行の金融政策は10月から急速転換、
厳格政策から緩和政策がとられるようになり、
現在までこの緩和傾向が続いている。
また同行は、経済衰退の防止、
経済成長の維持、社会福祉の確保に対する
政府の緊急対策(決定No. 30/2008/NQ-CP)に基づき、調整を行った。
金融緩和政策として、
国家銀行は、各商業銀行に資金を大量供給、
それを通じて、各経済セクターに資金貸出を促進し、
生産拡大、輸出入・投資生産を支援する構え。
これらは2009年の経済危機脱出に必死な企業の支となるだろう。
しかし、金融・銀行関係者や投資家が
最も関心を寄せている問題は、
今後、公定歩合の引き下げがいつまで続くか、である。
これは非常にデリケートな問題であり、
国家銀行は、積極面と消極面の両方を検討する必要がある。
まず、公定歩合の引き下げを続けると、
2008年の年利17%~19%時に大額のベトナムドンを調達した
商業銀行に大きな影響を与えることになる。
さらに、国家銀行が資金を大量供給すると、
ベトナムドンの価値が低下。
それにより、ベトナムドン債券を大量保有している外国投資家が
大きな損失を被ることとなる。
また、外国投資家がベトナムドン債券を売却後、
外貨へ両替するため、
ベトナムドンの価値がさらに低下。
すると、人民の一部に影響を与え、
USDを確保する者が増加し、VNDは輪をかけて安くなる。
実際、ベトナム経済はインフレ状況をまだ乗り越えていない。
2008年にCPIが22.4%になったため、
国家銀行の金融政策が緩すぎると、
インフレ上昇がまた起こる可能性もある。
従って、今後の公定歩合引き下げには、
2009年のインフレ状況を正しく予想する必要がある。
国家銀行は、金融緩和政策と
公定歩合の引き下げによって利益を得る各経済セクターに、
経済成長促進を求めることを、検討する必要がある。
ベトナム輸出企業は、
ベトナムドンがUSD、JPY、EUR等の
外貨より安くなると、競争力が高くなる。
経済衰退による大きな影響を受ける中小企業は、
活動維持のため、安い信用資金源を必要とする。
彼らは、ベトナム経済発展の大きな原動力であり、
新しい仕事を作り出し、経済・社会福祉を安定させる存在である。
ベトナム経済は成長率低下の危機に直面している。
2009年、成長率が5%に留まるとの予想もされている(IMF金融機構)。
そうなれば、この11年で最低の成長率となる。
この緊急事態打開には、
国家銀行の積極的な対策が不可欠であり、
2009年も金融緩和政策を実施すると考えられている。
そして今後も、公定歩合の引き下げが続く可能性が高い。
しかし、そのタイミングや度合は、
未だ予測不可能であり、
経済が、金融緩和政策にどのような反応を示すかによって、
動きが変わるものと見られる。
Sanotc.com 2009年1月15日