ベトナム会計報告 国際会計基準との違い
財務省は2001年から2006年末までに、
ベトナム会計の基準30(VAS)と各ガイドラインを発行してきた。
各VASは国際会計基準(IAS)に基づき作成されたが、
修正、補足、削減部分が多く、
システム全体に統一性がなかった。
会計基準のガイドラインもある。
さらに、VASの研修や教育も十分に行われていないため、
各社の会計報告書には不備が多く、
投資家や経営者の要求に、まだ対応できない状況である。
以下は制度と実際の状況との、報告の相違点、欠点である。
相違点全般
IASは、会計報告書に掲載すべき
言葉、情報、作成様式について
細かく規定しているが、見本は規定していない。
理由は会社の規模、営業分野の特徴によって、
それぞれの異なる形式で作成されているためである。
ベトナムの会計制度には、
統一の会計口座システムがなく、
会計報告書も統一されていない。
営業成績の報告
①営業活動による利益が正確でない。
会社において営業活動による利益は、
最も重要な数字である、安定的に予測できるものである。
それに対し、財政活動や他の活動による利益は
原則として不安定で、予測が容易でない。
従って、国際会計基準では、
企業の利益とは、営業活動による赤字、黒字であり、
財政活動の収入や経費は含まない(金利等…)。
しかし、VAS21の場合、
「営業活動による純売上」には、
財政活動の利益と経費が含まれている。
それを見て投資家は、来年に特別なことがなければ、
会社の営業利益は、今年と同様であると考えることになる。
その他、「純」という言葉も削除すべきである。
「純利益」は、税引き後利益のことである。
②1株当たりの基本金利 (EPS)が正確に計算されていない。
VAS30とIAS33のガイドライン
-通達No.21/2006/TT-BTC-によると、
EPSは純利益(赤字と黒字)とは、
流行の一般株式の数に割るものである。
しかしVAS 30は、一般株式に対する
利益の減少調整(例えば、顧客の無償基金、
取締役会の無償基金、社員の奨励・福祉基金等...)
を規定していない。
IASの場合、これらの基金を作るための経費は、
配当金から引き当てられる。
通常、各会社とも、一年間の純利益の
5~15%が社員のボーナスとして支給される。
株数については、無償発行、追加発行、
配当金支払いのための追加発行等の株式は、
期間初日から計算される。
③ EPSの調整が不充分。
通達No.21には、
会社の資産、資金の増減を作らない無償発行、
追加発行の株式は、
発行時点で報告年度の初日に計算される、とされている。
また、各前年の株数と比較するため、
株数が適当に調整されている。
実際、上場会社の会計報告書では、
株数の調整が行われていないため、
投資家がEPSに関する正確な情報を
なかなか入手できない状況にある。
例えば、既存株主に対する有利発行の場合、
無償の要素があることから、EPSを調整するべきである。
各年のEPS成長を分析する際、
本来であれば、各投資家は元のEPSではなく、
調整済みのEPSを比較すべきところである。
その他、通達No.21には、
配当金を株式で精算することについての規定もされていないが、
実質的には、これが無償発行と同様であり、
IAS33に明記されていることから、
ベトナム会計制度も、
配当金清算用の追加発行について、補足する必要がある。
④EPSが薄まる(diluted EPS)。
各会社は、変更債券の発行、有利発行、
株式の購入権発行を行う権限がある。
これらの債券、購入権は、
将来、一般株式に変換することができるため、
その時点でEPSが大きく変更される。
なぜなら、株数が急増加しても、
資金がそのままだからだ。
その場合、元のEPSで株価の変動を予測すると、
大間違いとなる。
IAS 33には、各会社に対して
営業成績報告書に元EPSと現在EPSの
指標を掲載することを求めているが、
ベトナム会計制度には規定されていない。
会計バランスシート
①主資本の項目には、主資金だけしか掲載しない。
社員手当て、取締役会手当て、奨励・福祉資金も
支出の項目ではあるが、主資本の項目ではない。
しかし会計バランスシート中では主資本の部分に掲載されている。
②配当金は「未配分の利益」の部分から
引き当てるべき項目であるが、
各会社は殆ど翌年の第1四半期末か、
第2四半期の頭に行われた株主総会の後に、配当金を精算する。
しかし、年度の会計報告書を作成する際、
各会社は配当金の配分計画を作成している。
本質的には、主資本は長期的に使用される資金で、
社債を清算するものではない。
この配当金がまだ正式に決定されていないため
「未配分の利益」項目に掲載するべきである。
そのようにすると、会計バランスシートは
財政状況や主資金を正確に反映するようになる。
③会社の資本金20%以下の短長期証券投資案件は、
現在のVASに替わり、IASに基づき
合理的な株価(市場株価)で報告するべきである。
現在、株価は暴落しているため、
投資家は下落リスクの
準備資金の引き当たる部分を見定める必要がある。
この部分が営業成績に大きく影響を与えるからだ。
④回収項目、支出項目は長期資産投資活動の
回収・支出項目は含まないほうが良い(資金流動報告部分)。
⑤在庫品の価値は
①純価値に基づき、準備資金を引き当てない方がよい、
特に現在の経済衰退状況では、
多くの貨物価格が急降下するが、なかなか売れない。
②企業の平常活動状況に基づき計算されていない。
以上の2点の理由で合理的に計算できない。
殆どの企業は、実際の価格の方式で単価を計算し、
生産経費を実際の発生経費で計算している。
この計算方式では、在庫品の単価が各期で大きく変動し、
在庫品の単価を正確に反映できない。
「在庫品」に関してIAS 2とVAS 2 は、
各企業の平常時の単価計算方式を使用すべきである。
各経費を企業の平常活動で計算(一年間の平均経費)すれば、
単価が安定し、販売価格を確定しやすくなる。
⑥長期資産は、故障、技術の時代後れを計算に入れない。
例えば、ある固定資産が故障したり、
技術が時代遅れとなったりした場合、その価値は直ぐに下がる。
IASは、会社はそうなった時点から、
この赤字を計算しなければならない、としている。
資金流動報告
現在の規定によると、
営業活動による純資金は、
投資活動による資金も含まれている。
例えば、A会社の場合、
2008年の税引後利益は300億ドンで、償却50億ドン、
短期資産と短期社債は年初と年末で変更しない、
建設資材調達会社に400億ドンを支払う予定の案件がある。
IAS 7やVAS 24、通達No.105/2003/TT-BTCでは、
間接方式で計算された資金流動の報告は、
営業活動の純資金=
税引後利益(300億ドン)+償却経費(50億ドン)-貿易経費(0ドン)
=350億ドンとなる。
しかし、長期資産の調達者に対する支払い資金は、
固定資金の購入資金と支払い部分とを別々にしないため、
資金流動報告書では、
営業活動の純資金=
税引後利益(300億ドン)+償却経費(50億ドン)
-清算しなくてはいけない資金(400億ドン)=-50億ドンとなる。
従って、二つ目の方式で計算すると、
多くの企業が固定資産建設(投資活動の中に含まれる)
のための資金を、営業活動の項目に入れるため、
営業活動の純資金の意味が違ってくる。
上記の例の場合、
2008年の会社の営業活動資金は350億ドンであった。
会社が平常に活動した場合、
各投資家は毎年この会社の営業活動で350ドン儲かる。
しかし、二つ目の方式で計算した場合、
会計報告では2008年の営業活動の純資金が
-50億ドンとなってしまう。
それを見ると、投資家は会社の営業活動の売上が、
経費をカバーできないていない、と判断することになる。
300億ドンの利益でも、会社の財政状況は問題があり、
この状況が続くと、会社が危険になる…と考えるようになる。
実際、会社の会計報告書の中では
未払いの固定資産があるため、
営業活動の純利益が大きくマイナスになる場合もある。
従って、資金流動報告書では、
会社が調達者に対する支払資金、顧客による回収資金、
長期資産調達に関する支払い資金を掲載していないのだ。
証券投資紙 2009年1月21日