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2009年01月30日

対越FDI 大幅成長の影に問題山積


2008年、外国からベトナムへの直接投資(FDI)が引き続き大幅に増加した。

2008年のFDI投資申請は総額640億ドル以上(2008年12月10日現在)に達した。
FDIは、外国投資法施行の1987年以降記録的に増加しているが、
2008年は2007年の3倍をマークした。

こうしたFDIの急増は、結果的にベトナムの投資環境の不整備を明らかにしている。

また、こうした投資環境不整備が、新たな問題を引き起こす。
それは、投資環境整備に対してベトナムが消極的であるという印象を外国に与え、
翻ってそれがベトナムの投資資金調達力、並びに
投資資金の有効活用力を阻害する、ということである。


① 法整備、投資誘致政策が不十分で規定、規制が統一性に欠ける。

この結果、投資管理機関による投資許可発給手続が、
省庁ごとにバラバラで統一されておらず、
投資案件の実施中に発生した問題の解決にも支障をきたしている。


②各地方行政の企画力が不足している。

投資許可の発給が、各地方行政へ徹底的に委譲されたため、
全体のバランスが取れていない状況である。
複数の地域省が同一製品の製造案件に重複して投資許可を発給することになり、
投資効果が薄れている。


③ インフラ整備が不十分で、これが投資家の大きな懸念事項となっている。

一般的に、投資家は公共インフラ整備(電気、水道、輸送、港湾)の
状況に合わせて工場を建設する。
公共インフラ整備が製造、輸送のニーズに対応できなければ、
工場が建設されても意味がない。

近年建設された経済団地の公共インフラ整備が、
投資開発需要に追い付いていない状況であり、
これがFDI案件の実施の大きな阻害要因となっている。
外国人投資家はこうした経済団地に安心して投資できないため、
大規模投資が成立しにくい。

計画的な停電さえ日程通りに行われない現況は、
企業にとって製造計画の立案、製造活動の遂行に大きな支障となっている。


④職業訓練を受けた人材、技術者の不足はさらに深刻化し、
特に、ハノイ市、Ho Chi Minh市、Dong Nai省、Binh Duong省の新設経済団地、
工業団地では顕著である。

人材不足は以前から存在した問題だが、
3年前に大規模なFDI案件が開始された後、一層悪化した。
また、ベトナム国内の教育機関及び教育カリキュラムは古すぎ、
企業の需要に対応できていない。
ストライキの現状が、企業にさらなる追い打ちをかける。
特に、大量の労働者を雇用している企業が一番深刻である。


⑤土地の立ち退きは、ベトナムの投資環境の要改善項目の中でも、
早期に改善されるべき点である。

土地の利用計画は各地方に委譲されたが、
地方の発展需要に対応できていない状況である。
多くの地方行政は大規模投資案件に対する土地供給が困難になっている。

土地の立ち退きと回収、さらに公共インフラ整備は、
大規模なFDI案件の実施にとって最も重要な問題である。

建設法の規定によると、地方行政は土地の立ち退き、
さらに投資家への土地の引き渡しの責任を負う。
立ち退きのための経費は地方の予算である。
予算の執行手続きが煩雑であるうえ、
国民に対する立ち退き補償が未だ不十分なため、
土地の立ち退き期間は予定より非常に遅れる、という現状がある。

また、投資家が計画通りに投資を実施しなかった場合、
予算の利用効果に影響を与える恐れもある。
立ち退きのために多額の予算が支出されたにもかかわらず、
投資案件が効果的に実施されない場合は、
こうした予算を回収するためにかなり時間を要することになる。

農業用の土地が工業団地、住宅団地、ゴルフ場に転用されていることは
国民の高い関心事である。
地方行政が土地の利用計画を策定しないまま、
農業用土地に工業団地、住宅団地、
ゴルフ場が建設されてしまった投資案件が数多くあった。
この問題について、ベトナム政府は2008年4月18日付決定No.391/QĐ-TTgで、
資源環境省に対して農業用土地を含む土地の利用計画に対する監査を求めた。


⑥地方行政のFDI分野における管理能力が不足している。

外国からの投資分野に対する地方行政の管理方針が正しくても、
管理システムや土地の利用計画不足等、
外国投資分野の管理責任者能力がまだ低いため、
各地方の間で不必要な競争が発生している。
各地方行政の連携、投資分野ごとの連携が行われなければ、
投資分野及び投資構造に影響を与えることになる。

またいくつかの地方行政では、大規模な投資案件で
投資家の能力を充分に審査していない。
地方間の過当競争で大規模な案件を増やしたい余りに行われる行為だが、
結果的に投資家が契約通りに実施しない案件が増加しかねない。

また、現在、FDI企業の活動状況に関する情報収集が非常に困難であり、
計画投資省でさえ充分な情報を受け取っていない状況である。
また、経済情報収集のための人材が未だ不足し、
需要に対応できていない状況である。


⑦重点経済団地におけるFDI案件の廃棄物管理が、
自然環境及び社会環境に大きな影響を与えている。

これは特に、大規模な製造業投資案件に顕著である。

実際、最近になって、環境管理機関が外国企業の関連会社による
環境汚染行為を発見した。
今後、各政府管理機関は投資審査、さらには投資案件実行状況や
企業活動状況の監査を厳格化すべきであろう。


⑧FDI促進策が不十分である。

下記のように、FDI促進のための専門性が低く、内容、手段とも未熟である。
* 国家として、投資促進の包括戦略を策定していない
* 投資促進が長期的な観点から行われていない
* システマティックに行われていない
* 投資促進専門官の能力がまだ低い
* 投資実施関連施設、企業活動環境の整備が不十分である
* 政府の管理体制、各省、地方行政の連携体制が不十分である。


ベトナムへのFDIは、中長期的には伸びが予想されている。
今年と来年の投資申請額は、2008年より減少するものの、
年間200億ドル以上と予測される。


筆者:計画投資省外国投資局長


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