四面楚歌に対する中国の対応策
前回、連日の物価上昇の中、「人心の乱れをいかに治めるか」を書いてみた。
人民元高による輸出産業云々などの動向は一般庶民には全く関知しないところだろう。
キーワードは、繊維産業(就業人口多い)、失業懸念=雇用不安、暴動含めた社会不安、
政府対応があるか無しかのように、自分の生活状況の改善に対して、
世の中がプラスに動いてくれるかどうか、に関心があるわけだ。
特に来週からは北京オリンピックが始まる。
光輝くイベントの中で、「光と影」を感じる市民は急増してくる可能性があるのではないだろうか。
物価重視主義から景気重視主義への配慮もバランス取れたマクロ経済の舵取りというより、
足元の危機状況を未然に回避したいという、四面楚歌を聞きつつある現政府にとって
避けて通れない政策対応だったのではと思われる。
米景気の減退に続き、欧州ユーロ圏においても物価上昇率が4.1%(7月)を記録、
個人消費の大幅鈍化が視野に入ってきそうだ。
中国にとって単なる通貨高による輸出競争力が低下してくるという問題だけではない。
中国発の輸出先そのものが一つ一つ力を失い始めてきている、ということだ。
連続利上げ等のこれまでの一連の金融引締め策により中国国内の消費センチメントは弱体化してきている。
それに加えて、今度は米国景気低迷の長期化の可能性や、欧州でも景気鈍化の兆候が出始めてきている。
インド等アジア各国でも利上げに動いた結果、内需に陰りが出始めている。
アジア域内での貿易総量そのもの、又は中国が介在できるところが少なくなり始めてくるのではないだろうか。
07年までの国全体の高成長の実績や高水準な企業収益の状況など、いつまでも続くものではない。
特に一般市民に関わる根幹のところでの低迷状態の長期化は、
社会主義国家にとって致命的な状態に発展することもありえると思う。
今回は、政府がそれらのことに気づいた証であり、その一連の政策は輸出抑制策の緩和だけではすまないと思われる。
市民の最低所得水準の引上げまで踏み込んだものも期待でき、社会不安を形成する要因は全て排除してくるように思われる。
株価はこれからそれらの対応を織り込みにいくのではないだろうか。
まだ、「底入れ宣言」するのは時期尚早であろう。
(大原 平)