乱高下相場に対してこそ、慎重さが要される
30日現在、原油市況は直近高値から17%超下落した。
これまで先行きに対する悲観的観測が大きく後退し、市場関係者から歓迎された。
米ドルも対ユーロで、直近安値から2.5%買い直され、株式相場にも明るさが見え始めた。
米NYダウと日経平均は直近安値から5%強反発し、上海A株も10%強、
香港ハンセンは8%と、それぞれ買い戻された。
米銀行銘柄の空売り規制対象拡大や、
米住宅金融公社支援法成立に向けた当局関係者間のしっかりとした動き、
足元で景気鈍化懸念が出始めたユーロに対して保有ポジションを下げ始めようとする
市場関係者間の動き(ユーロを売り、米ドル買いの地合いならし)、など
状況は決して悪いとは言えない状況だ。
これまで悲観一色であっただけに目先の反発のふれ幅は大きいが、
問題はその持続性があるかどうかであろう。
まず注意すべき材料を並べてみよう。
1)日銀が「インフレターゲット論」に関心を持ち始めたこと:
実際に物価が目立って上昇しなくても予防のための利上げが可能になるかどうか。
円高に振れる大きな材料となる可能性がある。
2)夏場の「恒例」の米ハリケーンの脅威が今年はあるかどうか:
生産や備蓄設備の機能低下による原油市況下落の巻き戻しの原因にされる可能性がある
(原油価格が再上昇し、高値トライする可能性)。
3)米サブプライム関連による欧州金融機関の立直りが現実味を帯びる前に
欧州景気が減退する可能性:
地球経済の中で、鈍化傾向を鮮明化する米経済を補完してきた欧州経済にも陰りが出始める可能性。
4)目先の商品相場の下落と実態経済との間に時間的なギャップが存在すること:
半年前からの価格上昇によるインフレ圧力の持続性により、
民間消費の低迷がここから表面化する可能性がある。
5)日本の不動産市況の低迷から脱却できる手立てが見つかるまで、
銀行、小売などに対する楽観視は禁物なのではないだろうか。
10年に一度の「深刻相場」の中で、今回はショッキング的事象による相場低迷ではなく、
スタグフレーションの現実化によるところが大きい。
それだけに「底入れ」宣言はより慎重さが要されるように思う。
(大原 平)