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2009年06月13日

過熱気味の信用成長率


2009年5月期は、ベトナムの銀行分野にとって
忘れられない月であった。
銀行システム内の信用成長率(資金貸出成長率)は
4月より4.2%、昨年末より14.91%増加した。
また、精算総額も4月より14.55%増加した。


この4.2%の成長率は、資金貸出が急増した
2007年の月間平均増加率より高いものである。
また、2007年に資金貸出成長率が急激に増加したため、
2008年の半には国家銀行が厳しい金融政策を適用した。

一方、今年5月の急速な成長は
今年の月間平均成長率を3%近くまで引き上げた。

この増加率は残りの7カ月にわたり維持された場合、
2009年の信用成長率は36%になる。

だが、このような数字は
国家銀行が目指しているものとはかけ離れている。

当初は22~25%と予想
年初、銀行分野の活動評価セミナーにおいて、
国家銀行は今年の期待される信用成長目標を
2008年と同様の21%前後とした。
ただ、最近、Tien-国家銀行副総裁が
今年の成長率予測は25%になると述べた。

最初の目標が実現されるには、
年初の増加率を考慮すれば、
今後年末までの成長率は
5月の成長率23.8%と同等を維持し
増加は月1%以下に抑えなくてはならない。

一方、副総裁が発表した数字によると、
6月から12月まで 成長率は
毎月最大1.43%程度の増加としているが
この数字を実現するには、
商業銀行各行は資金の貸し出しペースを
ダウンしなくてはいけない。

しかし、現時点では資金貸出をペースダウンすることは
大変難しいと思われる。

需要拡大対策の実施後4カ月間で
金利支援資金3,319,060億VNDが貸し出され、
資金貸出総額を大きく引き上げた。

また、2009年12月末までの最大貸出額は
600兆VNDになる可能性があり
今後、数百兆VNDが貸し出される見込みもあり、
この膨大な資金により、
信用成長率がどこまで増加するか
誰も答えることはできない。

さらに、資金貸出の時期について、
通常、第3四半期と第4四半期は
企業が輸出商品を含む年末向け商品を生産するため
積極的に資金を借り入れする時期で
銀行の活動最盛期ともなる。
しかし、今年の信用成長目標を達成するためには、
今後6カ月において
銀行各行は不良債権の増加を抑える必要もあり、
銀行は両極的で不合理な立場に立たされることになる。

資金貸出通貨のアンバランス
資金貸出が急成長している一方、
その通貨のバランスが取れていないことは
最も大きな問題である。
昨年末と比較すると、
2009年5月までの貸出総額は
ベトナムドンが20.59%増加したものの、
外貨が-6.34%である。

これは、ベトナムドンと米ドルの貸出金利が
年間5%程度の差であり、
金利支援制度を利用した場合の借り入れでは
その金利はほぼ同程度であり、
外貨で借り入れを希望する企業がないのである。
このような状況において、国家銀行は
商業銀行各行に対して
外貨貸出金利を下げるために
調達金利を減らすことを勧めた。

また、銀行協会も各信用機関に対して
米ドルの預金金利を
年間1.5%に引き下げるよう呼びかけている。
具体的には、銀行協会は
ハノイ市とホーチミン市で行われた
二つの会合において
外貨調達金利の引き下げについて
銀行各行に合意を求めている。
各信用機関の反応としては全員が同意、
直ちに引き下げはしないものの、
最大年間1.5%に下げる予定という。

このように、国営銀行と商業銀行数行も
金利を引き下げたが、
小規模の商業銀行は最大年間2%で維持する。

今後、国家銀行の目標として
魅力的な米ドル貸出金利を策定し、
企業がベトナムドンではなく
米ドル建てでの借り入れ促進が挙げられる。
だが、外貨借入の問題は、
金利ではなく為替レートもある。

輸入企業は、精算のために外貨での借り入れをするが、
銀行に返済する際に銀行から外貨が購入できるか、
ベトナムドンで返済する場合に適用されるレート、
ベトナムドンでの返済を銀行が認める、
などを懸念する。
これに対してある銀行の担当者は
「どんな通貨で借り入れしても、
同じ通貨で返済して欲しい」
と強調する。

実際、企業の外貨購入において、
銀行が企業の外貨購入申請を断るケースがうる。
この場合、企業は外貨を購入できないため、
銀行からの借り入れを返済できない。
返済期限を越えた場合には、
銀行がやむなく企業に外貨を売却するが、
企業が必要とする一部しか対応できないため、
返済が延期される。

資金貸出成長のバランスを取るためには
このような為替とレートの問題を解決する必要がある。

債権不良化の危機
資金貸出が短期間で急増すると、
不良債権の割合も高くなる危険性がある。
国家銀行の発表によると
昨年の銀行システム全体の不良債権は
全体の3%程度を占めるにとどまった。
現在、この数字は約2.6%と推定される。

ただ、正式の数字は
各政府管理機関より発表されてはおらず、
不良債権の割合は昨年より低くなるものの、
実際の総額は大きくなる可能性が高い。

また、不良債権の分類も
各機関で定義がまちまちである。
そのほか、貸出案件の審査や資金用途の監査は脆弱で
自社・自行の不良債権の状況把握も困難である。

一方、ここでの最も関心されている点として
-この急速な資金貸出時期がいつまで続くのか
-成長率を下げる方法が何か
-徐々に減らすのか、急激に減らすか
といった点である。

信用成長率が大幅に増加すると、
インフレは爆発的に襲ってくる。
2007年の経験はまだ記憶に残っているのか。

資金貸出成長 – 悲喜こもごも
資金貸出成長率の急増は、
二つの面で積極的なシグナルといる。

一つは生産営業の投資需要と市民の消費需要増を表す。
これは政府の今年の最優先課題である
「経済衰退を防止」の実現につながる。

もう一つは、営業生産の投資資金需要を表し、
低い経費で資金借入が可能となり、
商品価格の引き下げ=消費拡大となり
経済衰退の防止を促進する。

ただ、2009年4月より
資金貸出が異常に増加しているが、
銀行システム外での現金流通スピードが
より高いことは大きな懸念である。

また、最も懸念されることとして
インフレが再び来ることであろう。
インフレはさまざまな原因で発生するが、
金融・信用の要素が直接的な影響を与える。
それに他の要素が加わると、
インフレを警戒する必要が出てくる。

そのほかにも注意するべき要素がある。
それは、現在、
大量の資金が証券市場に導入されているが、
一部の資金は金市場に、
さらに一部の資金は不動産市場に導入されている。
ただ、証券市場や不動産市場は
温暖化傾向にあり
商品、サービス価格に対して
大きなプレッシャーをかけていない。

VN-Indexがまた暴落する(通常8月上旬)し、
不動産市場が再度フリーズすると、
大きな資金が流通することとなる。



サイゴンエコノミックスタイムズ 2009年6月12日

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