越3大課題 外国資金、信用、金利とレート
ベトナムが直近で抱えている課題は、次の3点である。
外国投資資金の多くが、ベトナム以外の
タイ、インドネシアと言ったアセアン諸国に流れていること。
アジアの証券市場が急上昇している一方で、
ベトナム証券市場が下落していること。
外国投資家が、市場視察を行っても購入までたどり着かないこと。
InfoTV.net 2010年11月9日
外国投資資金の多くが、ベトナム以外の
タイ、インドネシアと言ったアセアン諸国に流れていること。
アジアの証券市場が急上昇している一方で、
ベトナム証券市場が下落していること。
外国投資家が、市場視察を行っても購入までたどり着かないこと。
外国投資家がベトナム市場に関心を示さない理由
証券市場が経済の健康状態を表す、という観点で言えば、
外国投資家はベトナム経済に対し懸念を抱いていることになる。
ベトナム、タイ、インドネシアのマクロ経済データを比較すると、
以下のようになる。
アジア開発銀行(ADB)の報告によると、
タイやインドネシアは高い経済成長率を維持しており、
国家収支もプラス、インフレ抑制も維持できている状況にあるという。
典型的な例で言えば、ADBの最新統計によると、
今年のタイはGDP成長率が7.5%と予測されている一方で、
インフレは3.2%、国家収支はGDPの+4%となっている。
ベトナムの場合、成長率が6.7%、
インフレ 8.5%、国家収支がGDPの-7.5%となる。
タイの年利は1.75%(2010年9月)で、
ベトナムの9%に比べかなり低い数値となっている。
こうした数字は、ベトナムの不利のところを反映し。
経済成長率がアジア地域の中でも低くないにも関わらず、
インフレと支出超過が大きいことから、
結果として為替レートが大きな圧力を受けることとなり、
VNDがUSDを下回る状況となっている。
逆に、タイやインドネシアでは外国投資資金の導入(FDIとFII)や、
(特にインドネシアは、中国とインドのFDIを多額調達したため、
2010年のFDI額が前年を大きく上回る)
国家収支の黒字により、
現地通貨がUSDを大きく上回る結果となっている。
外国間接投資家についても、この両国は、
現地通貨高の圧力をこれ以上かけないようにするため、
短期投資資金の導入を奨励していない。
しかし、外国投資家が最も懸念しているのは、VND安ではない。
10月中旬、Financial Timesは
「Vietnam: not hot money, but 'what money' 」という記事を掲載した。
この記事は、他の東南アジア諸国が
外国投資資金を急速に導入することに警戒しているのに、
ベトナムは例外である、と記している。
外国投資家がベトナム以外で投資チャンスを探す理由とは、
ベトナムでは、利益を母国へ換金するための
USDが足りない、ということであるという。
加えて外国投資ファンドや上場ファンドも少ない。
また、外国投資家の信用に値する証券会社も少ないのである。
当然これは、ベトナム証券市場に対する
一般的な外国投資家の見方である。
しかし、UBSの指摘を無視することはできない。
UBSは、ベトナムの資金借貸成長率が高すぎること、
国家支出超過が大きいこと、
VNDの切下げ圧力が高いことに言及し、懸念を示している。
これはベトナム経済専門家も懸念していることである。
ADBの最新報告書でも、この問題について言及されている。
ただ、タイとインドネシアでは、
資金借貸の急速成長を大きな問題としてはいない。
しかし、ベトナム経済の中で最も解決が難しい問題は、
資金借貸成長率が高すぎることである。
企業に高金利貸付けた資金が、期限までに回収できるのか、
銀行の資金貸付のリスクはどこまであるか?
こうした問題は、外国経済専門家が非常に注視している面である。
IMF、 The Economist、Fitch Ratings等
国際監察機関が最も懸念しているのは、
ベトナム政府の政策実施が、予測できないことである。
IMFは、ベトナム政策の目標が散らばりすぎていて
(インフレ、GDP成長、資金借貸成長、為替レートの安定等)、
政策実施が安定しない、政策変更が予測できない、と指摘している。
外国投資家にとって、政策を予測できない国に投資することほど
大きなリスクはない。
ベトナムは高い経済成長率を誇っており、国内の需要も高い。
しかし、
(1)高金利の資金借貸が多く、銀行システムの安全性に疑問があること。
(2)支出超過とインフレ上昇で、換金用外貨(USD)が不足していること。
(3)政策の変更を予測できないこと。
こうした外国機関の評価から、
外国投資家のベトナム離れが進んでいる。
外国投資家の関心を呼び戻すには、
経済成長力、魅力的な投資ルート、
投資リスクの軽減がもっとも重要な課題となってくる。
ベトナム証券が急成長しない理由
ベトナム証券市場が急上昇しない理由は、
上記分析の中にも多く表れている。
上記分析により、マクロ経済の先行きの暗さが見えるため、
外国投資家は、ベトナム証券市場を信用できなくなっているのだ。
貿易収支のマイナス幅が大きいほど、
VND安の圧力は高まる。
インフレも上昇し、金利も高くなる。
国内企業がこの先どのように、高い金利を払っていくのか。
それが明らかにならない以上、外国投資家の不安は増すばかりなのだが、
ベトナムの投資家は、この点の心配はないのだろうか?
ここで、資金の流動を見なくてはならない。
ベトナム証券市場は2006年と2007年に急成長した。
証券売買用の借金と分野外の投資活動に対しては、
国営企業と銀行が大きな役割を担っていた。
最近の政策調整後、こうした資金源は大きく制限された。
ベトナム証券市場の成長は、通常の投資資金の成果ではなく、
他の分野から証券分野に流れてきた国内資金のせいだったのである。
今はこれら資金源が制限され、
証券市場の成長も小康状態となっている。
また、安定した資金源.である国民の預金は、
金と外国通貨に変換されている。
経済成長の展望が明るくなり、
企業が楽観的な営業成績を発表し、
国民の長期的に財産確保していきたい、
という需要に対応できるだけの
証券市場への投資手段が多様化すれば、
今の状況は改善されていくはずである。
ただ、現在は企業業績がイマイチのため、
ベトナム経済の悪化が一朝一夕で回復することはないだろう。
また、国民の預金から資金調達するためには、
そうしたサービスや仕組みがまだまだ整っていない状況である。
活路はどこに?
こうした分析を見ると、
投資家は、実に多くの理由から、
ベトナム証券市場の成長を待っているといえる。
しかし、以下の理由から
今現在、ベトナム証券市場に投資するのもアリだ、
という考え方もある。
(1)タイやインドネシア等は短期投資資金の導入を制限している。
この資金がベトナムに導入されることで、
外国投資家がベトナムに戻る切っ掛けとなる。
(2)金利の引き上げは、企業や証券市場に影響を及ぼすが、
国際経済のアナリストの中には歓迎する声もある。
外国投資家はインフレ上昇と資金借貸の成長抑制、
厳しい金融政策を実施するか、ベトナム政府の動きを見たい。
銀行に対する新資金安全比率は、
資金流動に短期的な圧力をかけることになるが、
うまくいけば、国際投資家業界に対しても信用が生まれることになる。
この1年間の国際消費需要と民間経済セクターの成長力は、
引き続き良い傾向となっているため、
民間消費と民間投資による経済成長の基盤はまだ安定している。
これについては、外国投資家も高く評価している。
USD/VNDの圧力も一時的なものと考えられる。
国家銀行がより厳しい金融政策を適用し、
為替レートの抑制に対する短期的な政策が実施されれば、
この状況は少し改善されるだろう。
最後に、現在、ベトナム証券は他国の証券に比べ、
安くなっているため、財政力がある投資家は、
じきに、ベトナム証券に投資することを考え始めるだろう。
Ho Quoc Tuan-Manchester大学(英国)博士
証券市場が経済の健康状態を表す、という観点で言えば、
外国投資家はベトナム経済に対し懸念を抱いていることになる。
ベトナム、タイ、インドネシアのマクロ経済データを比較すると、
以下のようになる。
アジア開発銀行(ADB)の報告によると、
タイやインドネシアは高い経済成長率を維持しており、
国家収支もプラス、インフレ抑制も維持できている状況にあるという。
典型的な例で言えば、ADBの最新統計によると、
今年のタイはGDP成長率が7.5%と予測されている一方で、
インフレは3.2%、国家収支はGDPの+4%となっている。
ベトナムの場合、成長率が6.7%、
インフレ 8.5%、国家収支がGDPの-7.5%となる。
タイの年利は1.75%(2010年9月)で、
ベトナムの9%に比べかなり低い数値となっている。
2010年ADBの予測 | |||
タイ | インドネシア | ベトナム | |
GDP成長率 (%) | 7 | 6.1 | 6.7 |
インフレ (%) | 3.2 | 5.5 | 8.5 |
貿易収支 (比GDP%) | 4 | 1.2 | -7.5 |
出典: Asian Development Outlook 2010 Update: The future of growth in Asia, tháng 9/2010 |
こうした数字は、ベトナムの不利のところを反映し。
経済成長率がアジア地域の中でも低くないにも関わらず、
インフレと支出超過が大きいことから、
結果として為替レートが大きな圧力を受けることとなり、
VNDがUSDを下回る状況となっている。
逆に、タイやインドネシアでは外国投資資金の導入(FDIとFII)や、
(特にインドネシアは、中国とインドのFDIを多額調達したため、
2010年のFDI額が前年を大きく上回る)
国家収支の黒字により、
現地通貨がUSDを大きく上回る結果となっている。
外国間接投資家についても、この両国は、
現地通貨高の圧力をこれ以上かけないようにするため、
短期投資資金の導入を奨励していない。
しかし、外国投資家が最も懸念しているのは、VND安ではない。
10月中旬、Financial Timesは
「Vietnam: not hot money, but 'what money' 」という記事を掲載した。
この記事は、他の東南アジア諸国が
外国投資資金を急速に導入することに警戒しているのに、
ベトナムは例外である、と記している。
外国投資家がベトナム以外で投資チャンスを探す理由とは、
ベトナムでは、利益を母国へ換金するための
USDが足りない、ということであるという。
加えて外国投資ファンドや上場ファンドも少ない。
また、外国投資家の信用に値する証券会社も少ないのである。
当然これは、ベトナム証券市場に対する
一般的な外国投資家の見方である。
しかし、UBSの指摘を無視することはできない。
UBSは、ベトナムの資金借貸成長率が高すぎること、
国家支出超過が大きいこと、
VNDの切下げ圧力が高いことに言及し、懸念を示している。
これはベトナム経済専門家も懸念していることである。
ADBの最新報告書でも、この問題について言及されている。
ただ、タイとインドネシアでは、
資金借貸の急速成長を大きな問題としてはいない。
しかし、ベトナム経済の中で最も解決が難しい問題は、
資金借貸成長率が高すぎることである。
企業に高金利貸付けた資金が、期限までに回収できるのか、
銀行の資金貸付のリスクはどこまであるか?
こうした問題は、外国経済専門家が非常に注視している面である。
IMF、 The Economist、Fitch Ratings等
国際監察機関が最も懸念しているのは、
ベトナム政府の政策実施が、予測できないことである。
IMFは、ベトナム政策の目標が散らばりすぎていて
(インフレ、GDP成長、資金借貸成長、為替レートの安定等)、
政策実施が安定しない、政策変更が予測できない、と指摘している。
外国投資家にとって、政策を予測できない国に投資することほど
大きなリスクはない。
ベトナムは高い経済成長率を誇っており、国内の需要も高い。
しかし、
(1)高金利の資金借貸が多く、銀行システムの安全性に疑問があること。
(2)支出超過とインフレ上昇で、換金用外貨(USD)が不足していること。
(3)政策の変更を予測できないこと。
こうした外国機関の評価から、
外国投資家のベトナム離れが進んでいる。
外国投資家の関心を呼び戻すには、
経済成長力、魅力的な投資ルート、
投資リスクの軽減がもっとも重要な課題となってくる。
ベトナム証券が急成長しない理由
ベトナム証券市場が急上昇しない理由は、
上記分析の中にも多く表れている。
上記分析により、マクロ経済の先行きの暗さが見えるため、
外国投資家は、ベトナム証券市場を信用できなくなっているのだ。
貿易収支のマイナス幅が大きいほど、
VND安の圧力は高まる。
インフレも上昇し、金利も高くなる。
国内企業がこの先どのように、高い金利を払っていくのか。
それが明らかにならない以上、外国投資家の不安は増すばかりなのだが、
ベトナムの投資家は、この点の心配はないのだろうか?
ここで、資金の流動を見なくてはならない。
ベトナム証券市場は2006年と2007年に急成長した。
証券売買用の借金と分野外の投資活動に対しては、
国営企業と銀行が大きな役割を担っていた。
最近の政策調整後、こうした資金源は大きく制限された。
ベトナム証券市場の成長は、通常の投資資金の成果ではなく、
他の分野から証券分野に流れてきた国内資金のせいだったのである。
今はこれら資金源が制限され、
証券市場の成長も小康状態となっている。
また、安定した資金源.である国民の預金は、
金と外国通貨に変換されている。
経済成長の展望が明るくなり、
企業が楽観的な営業成績を発表し、
国民の長期的に財産確保していきたい、
という需要に対応できるだけの
証券市場への投資手段が多様化すれば、
今の状況は改善されていくはずである。
ただ、現在は企業業績がイマイチのため、
ベトナム経済の悪化が一朝一夕で回復することはないだろう。
また、国民の預金から資金調達するためには、
そうしたサービスや仕組みがまだまだ整っていない状況である。
活路はどこに?
こうした分析を見ると、
投資家は、実に多くの理由から、
ベトナム証券市場の成長を待っているといえる。
しかし、以下の理由から
今現在、ベトナム証券市場に投資するのもアリだ、
という考え方もある。
(1)タイやインドネシア等は短期投資資金の導入を制限している。
この資金がベトナムに導入されることで、
外国投資家がベトナムに戻る切っ掛けとなる。
(2)金利の引き上げは、企業や証券市場に影響を及ぼすが、
国際経済のアナリストの中には歓迎する声もある。
外国投資家はインフレ上昇と資金借貸の成長抑制、
厳しい金融政策を実施するか、ベトナム政府の動きを見たい。
銀行に対する新資金安全比率は、
資金流動に短期的な圧力をかけることになるが、
うまくいけば、国際投資家業界に対しても信用が生まれることになる。
この1年間の国際消費需要と民間経済セクターの成長力は、
引き続き良い傾向となっているため、
民間消費と民間投資による経済成長の基盤はまだ安定している。
これについては、外国投資家も高く評価している。
USD/VNDの圧力も一時的なものと考えられる。
国家銀行がより厳しい金融政策を適用し、
為替レートの抑制に対する短期的な政策が実施されれば、
この状況は少し改善されるだろう。
最後に、現在、ベトナム証券は他国の証券に比べ、
安くなっているため、財政力がある投資家は、
じきに、ベトナム証券に投資することを考え始めるだろう。
Ho Quoc Tuan-Manchester大学(英国)博士
InfoTV.net 2010年11月9日