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2012年05月21日

ベトナム小売市場 国内企業劣勢


計画投資省の統計によると、今年に入って4月までに、
ベトナム全土で解体・活動中止となった企業は17,735社に上ったが、
その中で最も多かったのは小売企業で、5,297社であった。


資金もない、人材もない 

ベトナム小売社協会は、現在の国内小売企業にとっての
最大の問題について、
第一に必要経費(資材調達経費、燃料費、運賃等)の増加、
そして消費の落ち込みを挙げており、
在庫過多により、生産・加工の中止に追い込まれるケースが多い、と語る。
小売企業は赤字を減らすために活動規模を縮小し、
活動中止せざるを得ない状況なのである。

一方、海外の小売企業は勢いがある。
営業中止に追い込まれているのは、
もっぱら国内企業が運営している店舗やスーパーマーケットなどだ。

同じ環境で活動しているのに、
どうしてこのような差が生まれているのだろうか?

答えは、一言でいえば体制の弱さだ。
財政力の弱い、人材不足、ロジステックサービス、
長期戦略、ネットワークの連携不足などにより、
販売不振になり、企業は立ち行かなくなる。

ベトナム小売社協会事務局長-Dinh Thi My Loan氏は、
ベトナム小売企業にとって一番の弱点は
財政力の弱さである、と分析している。
海外企業が、簡単に勝てる部分である。

多くの小売企業で資金力が不足しており、
他の企業や地方と提携するなどして、
商品をスーパーに仕入れることができない。
また、同じ理由から店舗の規模が小さく、
商品の大量仕入れができないため、
購入単価が高くなり、海外企業との競争力も失ってしまう。

また人材も、海外小売企業に引き抜かれている、という現状がある。
財政力が弱いため、国内企業の給与はどうしても低くなる。
そのため、優秀な人材を足止することができないのだ。
統計によると、ベトナムスーパーの店員の給与は、
海外スーパーより10~20%低いという。

そのため、ベトナムスーパーの店員が、
海外系スーパーに転職するケースが多い。
現在、ベトナム小売会社の中で、
専門の研修を受けている人材は、わずか4~5%に留まる。

また、スーパーの経営には、
専門のロジステックシステムが不可欠である。
Metro Cash&Carryなどは、2,000~2,500万EURを
ロジステックシステムの整備に投資し、
80万EURを研修に投資している。

また、ベトナムでは流通センターの整備も充分とは言えない。
正月に商品が品薄となる問題の解決方法もまだない。
こうした問題は人件費の増加につながってしまったりする。

国内小売企業のロジステックシステムは国際基準を満たしていない。
統一もされておらず、安定した調達元も作られていない。
品物の調達、販売に関するお互いの連携がまだ弱いのだ。

ベトナム小売企業 企業間の連携希薄

ある統計によると、海外企業運営のスーパー1店舗の1日の売上が、
国内スーパーの20店舗の売上に相当するという。
ハノイ市のBigC Thang Longのスーパーでは、
年間売上は2,000万USDに達するが、
国内企業が運営するスーパーでは年間500万~700万USDが限度である。
また、必要諸経費が高いため、利益が薄い。
銀行の借り入れも困難となれば、
マーケットシェアが小さくなるのも、当たり前だろう。

財政力が弱さを補うため、多くの企業が、
様々な方法で営業を拡大させている。
その中で、電化製品を販売する企業は大きなリスクに直面している。
大分のベトナム電化製品販売会社は、
自社商品を担保資産として銀行から借入を行っている。
調達元に対する支払い期限は3~7週間後で、
小売企業は新店舗をどんどん開き、清算期限になると、
銀行から借入をして調達元に支払うという状況になっている。
市場の状況が良い場合は問題がないが、
販売不振となれば一気に借金が膨れ上がり、倒産に追い込まれてしまう。

ハノイ市スーパーマーケット協会会長-Vu Vinh Phu氏は、
国内小売企業の最大の弱点は、長期戦略を持たないことである、と語る。
海外小売企業が大規模スーパーを展開するとともに、
中小規模の店舗の整備も進めている。
また、ベトナムに進出している海外小売企業は、
最初にブランドアップを行い、
農家、生産工場、加工工場と提携し、商品の調達元を整備している。

ベトナム小売のネットワークは、まだ代理店形式で運営されており、
利益も薄い。互いの連携も弱い。
2007年、初めて国内大手4社が提携を行った。
Saigon Co.op、Hapro、SatraとPhu Thai Groupがそれである。
この4社はVNグループ (VDA)を立ち上げた。

VDA設立の目的は、各企業独自の強みを生かして、
海外企業と競争できる会社を育てて行くことにある。
ただ、各企業間の連携はまだまだ希薄で、
当初の約束も上手く実行されていない。
設立から5年が経過した現在、
VDAは、ベトナム小売システムに余り大きな貢献はできていない状況だ。

国内小売企業は、各企業間での競争が絶えない。
最近、倒産した小売企業の中では電化製販売店の数が圧倒的に多い。
倒産の理由が様々であるが、その中で一番重要な理由は、
敵対企業との安値競争であるという。
集客のためとはいえ、赤字になるほどの価格で販売している場合もある。

商工省の統計では、ベトナムのWTO加盟から5年後、
スーパーの数は20%以上増加、
ショッピングセンターも72%増加している。
その他、コンビニストアや、ほかの店舗もどっと開設されるようになった。
店舗が乱立する中で、国内企業がいかに生き残りをかけるか。
長期戦略と企業間の連携は欠かすことのできない要素である。



Vef.vn  2012年5月21日

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