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2012年10月08日

日本企業の中国撤退 ベトナムに福をもたらすか


領土問題に関連するリスクを避けるため、
中国進出している多くの日系企業が、
東南アジア地域への移転を検討するものと見込まれている。
その中にはベトナムも含まれる。


ただ、主力と思われる工業分野への外国投資調達に関して、
ベトナムの競争力は弱い。

先日、Toyota、Honda、Nissan、Panasonic等の
自動車、電化製品生産分野の日本の大手企業が
中国工場での生産を全て停止させた。
その他、中国政府管理機関、特に税関が日本企業に対して迷惑をかけている。
そのため、日本企業はリスク分散化を図るため、
他の国へ、生産拠点の移動を始めている。

中国は、今も日本にとって最重要貿易相手国ではあるものの、
日本企業は他の国、特に東南アジア諸国への移転を画策している。
こうした動きは、東南アジア各国にとって
大きなチャンスと言える。

ハイテク企業 誘致困難

ベトナムは、多くの日本企業から高い関心を受ける国である。
しかし、日本の大震災やタイ洪水の発生以後、
ベトナムで自動車産業や電化製品産業といった
ハイテク系の投資を調達できる可能性は高くない。

Intertekグループ評価プログラム(イギリスの投資コンサルティング会社)
社長-David Horlock氏は、
領土問題のリスクを除くと、近年、中国の人件費、
土地借用料、インフレ等の要素の影響で
投資家は、その利益を大幅に減らしている。
それまで、中国南部に投資した場合、25%の利益が得られたが、
今が5%しかないという。
そのため投資家は、より低い経費で収まる場所に
工場を移す傾向が出てきている。

投資家たちに、中国から
ベトナムを含む東南アジア諸国に移動する傾向が広がっている。
ベトナムの強みは安価な賃金で、中国南部の約半分で済む。
また、海岸が長いため、貿易活動に便利で
国内の輸送費も節約することができる。

Horlock氏は、「繊維・縫製、家具、
インテリア等系の産業は、ベトナムに移されるだろう。
しかし、電気産業、自動車産業等の
ハイテク産業の移転先になるのは、現状難しい。」と述べた。

ベトナムが抱える3課題

専門家はハイテク産業の誘致の困難について、
政府政策の煩雑さと対策遅れ、技能の高い人材が少ないこと、
裾野産業の未発展などの理由を挙げている。

商工省重工業部副部長-Ngo Van Tru氏は、
ベトナムは政策が遅れており、
海外のハイテク産業を誘致促進することが、まだまだできない、と語る。

日本の投資家は法律的手続きの複雑さ、
政策と政策実施の統一性について、よくコメントしている。
日本企業もベトナム市場への移転には懸念を示している。

Nishimura & Asahi法律コンサルティング会社の代表者は、
「ベトナムの法律システムは、急速な経済発展に追い付けず、
 不安定で変更が多く、統一されていない。
 そのため、投資家だけではなく
 投資コンサルティング会社も非常に困っている。」と述べた。

現在、ベトナムで活動している全ての自動車会社などは、
政府政策の連続変更に、非常にうんざりしている。
政府が年3回から4回政策を変更することも珍しくない。
こうした突然の変更に、企業も準備が追い付かない状況だ。
それだけでなく、ベトナム政府が車両の利用者を減らすため、
複数の税金制度と手数料制度の適用しており、
生産力も大幅減となった。

インフラ整備が良くないこと、
技能系の労働者が不足していることは、
企業にとっても深刻な問題の一つである。
JBICインフラ整備・エネルギー・水源投資担当財政部長-Hideo Naitoは、
ベトナムが直面している問題について、
インフラ整備と、高度な人材の不足を挙げている。

タイ、インドネシア、マレーシアと比べても、
ベトナムのインフラ整備が規模の小さくて質も良くないので、
外国から大量な投資資金を吸収できない。
インフラ整備がこれ以上遅れる場合、
近い将来外国投資資金の調達は非常に困難になるはずだ。
偶然ではないがこの近年、
ベトナムへの外国投資資金は大幅に減少している。

先日、日本の中小企業調査団がベトナムへ投資調査に訪れた。
今回は2回目で、日本商工会議所(JCCI)専務社長-Toshio Nakamura氏が
ベトナムを訪れた。
1回目は4年前だったが、ベトナム営業環境は、
余り変わらないと評価された。

労働人材について、ベトナムの教育機関から
質の高い人材を探すことは非常に難しい。
企業が自力で人材を育成しようにも、経費と施設がない。
また、企業が人材育成しようにも、失敗する場合が多い。
理由は、ベトナム労働者は目先の利益にとらわれがちで、
長期的に技能を高めていくことが難しいのだ。
日本企業に言わせると、多少の技能や知識を見に付けたとたん、
給料の高い他の会社に移ってしまう人が多いという。

また、外国の自動車産業がベトナムに進出しない主な原因は、
ベトナムの裾野産業が発展しないことである。
自動車産業と電気産業の先端技術には、
数多くの部品製造会社が必要になる。
ベトナムはそうした裾野産業が非常に弱いため、開発が困難なのだ。

そのため、外国自動車会社にとって
ベトナムが優先投資先としては選ばれない。
多くの外国自動車会社はマレーシア、
インドネシア、フィリピンを優先的に選ぶ。
これらの国では裾野産業がある程度発展しているため、
部品調達業者を簡単に見つけることができるのだ。

電気産業も同様な状況だ。
ベトナムでは組立・簡単な作業しか行われていない。
現地で調達できるのはダンボール箱ぐらいであるためだ。

チャンスを逃さないで!

制作としては、ベトナムは裾野産業開発政策として
決定No. 12/2011/QD-TTgを、2011年2月24日に発行している。

しかし、未だに裾野産業の目覚ましい発展は見られない。
規定No.12について、当初に商工省は、
裾野産業開発のための規定を作成して、
その中で裾野産業への投資を勧めるための
具体的な数字を掲げる予定であったが、他の省庁が反対した。
具体的な数字や内容を外すと、規定は曖昧なものになり、
優遇制度などの魅力はなきものになってしまった。

上記の規定No.12は、2011年2月24日に誕生以降、
これまでに優先制度を申請した企業は一軒もない。
ただ、一軒だけ投資案件で優遇制度を申請したものがあったが、
手続きが複雑すぎて待ちきれなかった。

裾野産業の開発遅れは、工業立国を目指すベトナムにとって、
致命的な問題だ。
国は、一刻も早く現状打開の具体策を打ち出すべきである。



CafeF.vn  2012年10月4日

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